1.プログラムについて

 このプログラムはフランス政府留学局（Campus France）が主催する四週間の短期留学プログラムです。寮生活またはホームステイをしながら，グルノーブル・アルプ大学（Université Grenoble Alpes）のフランス語教育センター（CUEF）でフランス語を勉強します。私は2020年2月下旬から3月下旬までに開催された春季語学留学プログラムに参加しました。

2.参加した理由

 フランス語の能力を磨くためと，フランスという国に対して憧れを持っていたためです。また，それまで国外に出たことがなかったので，海外で生活するということがどういうものなのか知るために留学してみたいという気持ちから参加しました。

3.現地での思い出

 2月24日からから始まった授業では文法や発音をはじめ，リスニングやスピーキングなどを勉強しました。日本でフランス語の授業を履修していたので文法については容易に理解できたのですが，フランス語でのコミュニケーションについてはほとんど経験がなかったので非常に苦労しました。授業では身近な話題をテーマにしていたこともあり，毎日の授業を通してだんだんとフランス語にも慣れて実践的運用能力が身についていきました。ところが留学中に新型コロナウイルス感染症（COVID-19）がヨーローパにも広がり始め，ついに3月中旬にはフランス全土で学校が封鎖されたため，あと1週間というところで対面授業が終了してしまいました。残り一週間分の授業はオンライン形式で受講しましたが，せっかく留学したのに，先生やクラスメイトと教室で一緒に学ぶ機会がなくなってしまったことが非常に残念でした。しかし，このような不測の事態に直面しながらZOOMを用いて先生や他の学生と交流することができたのは貴重な体験でした。日本への航空便が欠航になったので帰国用に予定していた航空券も変更しなければならなくなり大変でしたが，旅行会社の方やこのプログラムをお世話くださっていた岡山大学の先生には最後までとてもお世話になりました。

 私は留学中，授業のない午後にはよく街を散策しました。グルノーブルの街並みは美しく，そして歴史を感じさせるものでした。街の人々は外国人の私に温かく接してくれて，パンを買うとほとんど必ず店員さんが « bon appétit ! （どうぞお召し上がりください）» と声をかけてくれました。フランスでは挨拶がとても重要視されていると本では読んでいましたが，実際に生活の中で現地の方とコミュニケーションをとることで「ああ，本当のことなんだ」と実感することができましたし，そのことがとても素敵なことだなと思いました。

 週末には列車に乗ってジュネーヴやリヨン，パリへも旅しました。パリを訪れたときはCOVID-19の影響でルーヴル美術館などの主要な観光施設が閉鎖され，地下鉄やシャンゼリゼ通りに観光客がほとんどいない異様な旅行となりましたが，それでもマルモッタン・モネ美術館でセザンヌやモネの美麗な絵画を鑑賞できたことは一生の思い出になりました。

4.後輩のみなさんへ

 この記事を読んでいる皆さんの中には，将来博士やポスドクなどといった形で海外に留学してみたいと思っている方もいると思います。特に理系の場合，海外の研究室で使用される言語は英語が主であることが多いそうです。なので，大学院や博士研究員で海外留学に挑戦したいと考えている理系の皆さんの多くは，英語学習には興味があれど第二外国語に対する熱意はそれほど無いかもしれません。実際，このプログラムに参加した中で私のように理系の人というのは非常に少数派でした。
 しかし，結局研究室では英語で議論するのなら，アメリカであれドイツであれ留学する国というのはキャリアにそれほど大きな影響を与えないのではないか，と私は考えます。つまり，自分のやりたい研究ができて，かつ自分が興味のある国を選んで留学すればよいと思うということです。
フランスはパンやワインが安くて美味しく，素晴らしい芸術文化が数多くあり，そして素敵な人がたくさんいる国です。この記事を読んだ皆さんが海外留学，特にフランス留学に興味をもってもらえたなら幸いです。