現地レポート
なぜこのプログラムを選んだのか?
生物学が好きで生物学科に進学しましたが、英語を話すことも大好きだったので、大学ではしっかりと留学したいなと考えていました。入学した年からコロナ禍でなかなか渡航することが出来ずもどかしい期間もあったのですが、時間のある時に行動しようと考え、3年生(2023年)の2月にヨーク大学のオンライン語学研修を受講しました。
しかし、オンラインプログラムを受けるなかでやはり現地で学習したいという思いが強くなり、渡航するなら今まで行ったことのない地域かつ日本人の少ない国がいいと考え、マルタ島を選びました。マルタ島に留学に行く、というと誰もが「それイタリア?」と答えるくらい知名度の低い国ではあったのですが、逆にそのマイナーさが良い!と俄然興味が湧きました。また、高校の時から少しずつ独学でイタリア語を学んでいたのでイタリアに近いマルタならどこかでイタリア語を使う機会もあるのではないかと考えたのも理由のひとつでした。マルタのプログラムは期間も学校も自分で選べるため、理系の私でも研究室や両親と日程や予算を相談し、納得して渡航できたのが良かったと感じています。
私が通ったのはACE English Maltaという2013年に設立された比較的新しい学校で、設備も電子黒板やネット環境に優れており、EAQUALS認定校としてその学習の質が保証されているところが魅力でした。アクテビティも、そのためのスタッフがいるほど非常に充実しており、短い期間でもしっかりとマルタの歴史や文化に触れられるだろうと考えて選びました。
語学学校の授業 ~学生主体のアクティブな授業など楽しく英語が使える環境~
ACE English Maltaはセントジュリアンにあるショッピングセンター「Bay Street」内にあります。クラスレベルは最大6クラスに分かれており、私は上から3番目のクラスに配属されました。クラスごとに使う教材の難易度が異なり、その教材の1章を1週間でやりきるという授業方針のもと、1人の先生が授業を進行します。
私が参加したのは週20コマのグループレッスンで、約10人のクラスメイトと共に文法を学んだりディスカッションしたり学生主体のアクティブな授業を受けました。1コマ約45分で、1日計4コマを平日5日間受講する仕組みなのですが、間に休憩があるのは1回だったので体感的には90分×2コマでした。クラスの時間は午前・午後・夕方と振り分けられ、授業外の時間は自由に活動できるようになっています。私が振り分けられたのは午後のクラスだったので夕方はアクテビティに参加したり、クラスメイトとカフェに行ったりとのびのび過ごせました。アクテビティの中には観光地を回る以外にもクラスの垣根を越えてディスカッションを行うものもあり、より楽しく英語を使える環境が揃っていました。
入学から1週間は自己申告制でクラスレベルの変更が可能で、実際に友人が何人か1つ上のクラスに移動していました。私も勧められたのですが、自信をもってしっかり話す経験を積みたかったので元のクラスに留まり、その分クラスの内容はすべて理解できるように集中して取り組みました。また、これは受け持ちの先生によるのですが、私の先生は授業内でゲームを行ったり、それぞれの国の文化を知れるような質問を投げかけたりと、受け身にならないような授業スタイルがベースとなっていて非常に良かったと感じています。
「わからない」ことを伝える勇気が授業の理解度を深めてくれる
クラス分けのプレテストがあったので文法はひとしきり勉強しなおしてから渡航しました。といってもがっつりやるのではなく、さらっと思い出すくらい、高校時代のノートや文法書を流し読みして軽く設問を解く程度のことでしたが「なんとなくでも勉強した」という事実が自信となって落ち着いてプレテストを解くことが出来ました。
さらに、この文法の勉強がクラスでの文法学習に役立ちました。というのもクラスは全部英語なので、今何の文法をしているのか、文法に関連する固有名詞もすべて英語になってしまうからです。【仮定法過去】、と日本語で習った文法も英語では【second conditional】。しばらく何を言っているのか分からなかったのですが、「あ、これ仮定法過去の英語訳か!」と文法問題を見て理解しました。下準備って本当に大事だなと実感しました。
私はついつい、特に英語の授業は分からないことがあっても分かった風に思い込んで受講しがちなのですが、ほかの国から来たクラスメイトは分からないことがあれば素直にはっきりと「わからない」と主張する強さがあり、改めて衝撃を受けました。先生もその生徒が分かるようになるまで根気よく教えてくれ、その環境が当たり前に存在していることが正の連鎖を生み、クラス全体がよりアクティブに英語を学ぶ空気感になっていたように感じます。自分の「わかっていなくてもわかったような気になっている」状態に気づいたとき、「わからない」と伝えるのは本当に勇気が必要ですが、いざ口に出してみると平気なもので、より授業への理解度が深まりました。
これは日常会話でも大事なことで、何を言われているのかわからないまま愛想笑いするよりも「もう一回教えて」と素直に伝える方がお互いのためになると実感しました。レストランでの注文や遊びに行く約束、ただの雑談でも素直に伝えることでお互いをさらに理解することができ、また認識の違いによるトラブルも起きませんでした。逆に自分の言っていることが伝わらない時はとにかく言い換え、ボディーランゲージを使い、分からない相手を責めずに根気よく向き合うことがよい経験となり、また良い英語のアウトプットにもなりました。
積極的に学ぼうとする姿勢が学び合う連鎖を生み出す
クラスメイトは私を含めて日本人2人、コロンビア人2人、ブラジル人3人、トルコ人2人の9人で、基本的に母国語は使わずお互いが意識的に英語を使い合っていたのが印象的でした。どんなに難しい問題でも、母国語を使わず英語で説明しあったり、できるだけスマホの翻訳に頼らないようにしたりと積極的に学ぼうとする姿勢が良い刺激となり、お互い学び合う連鎖が出来ていたように感じます。「誰かが失敗しても笑わない」、「わからないことがあるのは当然」という空気感によって、お互いがリラックスして授業に集中できる良い環境が自然と生まれていました。
将来の目的を持つクラスメイトから刺激を受ける
また、特に女性陣はキャリアアップを目的として学びに来ていた社会人が大半でした。国際弁護士になりたい、海外でデザイナーとして働きたいなど将来の目的がはっきりとしている彼女らの話を聞くと将来の考え方や視野がぐっと広がりました。特に同い年のトルコ人であるメルヴェは司法試験に合格後すぐにマルタに来ていて、入りたい弁護士事務所に入るためにはトルコ国内では不十分だからという理由で英語を学んでいました。身の回りに海外で働くことを視野に入れている女性がたくさんいる環境は初めてだったので、非常に刺激的で自分の将来をあらためて考えるよいきっかけとなりました。
プライベートの確保されたシェアハウスで友情を深める
私は一人の時間が無いとダメなタイプだったので、シェアハウスのなかでも1人部屋を選んで渡航しました。学校でも家の中でも基本的に誰かがいる状況だったので、もちろん安心ではありましたがプライベートの守られる空間があった事はメンタル的にも非常に良かったと感じています。
シェアハウスはワンフロアに一部屋の作りの建物で、玄関を入ってすぐにリビングがあり、テレビや冷蔵庫などの基本的な電化製品はすべてそろっていました。お風呂、トイレ、キッチン、ランドリーは共用でしたが、使い方は住んでいる時間の長いルームメイトが教えてくれたため、特にも問題なく過ごせました。また、住宅街の中に位置している建物だったので治安的にも安心でした。
ワンフロアあたり5人で共同生活したのですが、基本的に皆クラスの時間や日中の予定が違うのであまり全員揃うことはありませんでした。しかしお昼や晩御飯を一緒に食べたり、私が寝坊しそうだったら起こしてくれたり、おすすめの観光スポットを教えてくれたりと関わることは多く、非常に楽しい時間を過ごせました。日本から持参したお米でおにぎりを作っているとルームメイトのチリ人が興味を持ってくれ、おにぎりを作ってランチを一緒に食べたのは良い思い出です。学校までは徒歩15分ほどの距離で近くにスーパーもあったので帰りにご飯を買ったり、時間が合えば一緒に登校したりしました。ルームメイトのなかでもチリ出身のリカルドとブラジル出身のシンティアは非常に良くしてくれ、お互いの母国語(日本語、スペイン語、ポルトガル語)を教え合いました。
私がマルタを離れる前日の夜、本当に奇跡的に5人全員が集まることができ、一緒にお酒やジュースをのみながらお互いの国のことや将来のことを話したのは非常に良い思い出です。文化の違いや習慣の違いは本当に微々たるもので、お互いを尊敬して入ればどんな人とも分かり合うことが出来るんだと感じました。
マルタで暮らす生活とは~気候・お店・買い物・食事など~
マルタ共和国はシチリア島南部に浮かぶ島国で、マルタ島・ゴゾ島・コミノ島の3つからなります。私はACEがよかったので住居エリアとしてはセント・ジュリアンを選びましたが、バーが多く夜が少し危ないのと買い物が不便だったので、もし語学学校にあまりこだわりがないならスリーマをお勧めしたいです。観光客用のホテルやレストランが多く、マルタで最も大きいショッピングモールもあり、首都バレッタまでのアクセスも良いので生活がしやすいと思います。
建物はマルタ全域でほとんどが石でできており、日中の照り返しはつらいですが建物の中は過ごしやすく涼しい温度だったので、暑くても快適に過ごすことが出来ました。暖かい地域なのでスーパーの野菜に虫がいたり、バーの近くはごみが多かったりと町の清潔さだけでみれば日本のほうがきれいですが、海外だと思えば許容できる範囲かと思います。リゾート地として有名なマルタなので、地域によってはスーパーやドラッグストアなどは点在するほどしかありません。食品に限らず個人経営の小さなお店が多く、近所の人とのつながりや人情で成り立っている仕事なのだろうなと感じました。夜遅くまでレストランやバーが空いていましたが少し高いのでできるだけ自炊するようにしていました。
街全体が世界遺産のマルタ島 歴史と文化が息づく観光スポットも満載!
マルタの首都バレッタは町全体が世界遺産として登録されています。初めてバレッタに入ったときはその美しさに圧倒されました。古い教会や建物が立ち並び、日本で言うところのお城のお堀や食文化もそのまま、歴史と文化が今も息づくすばらしい街並みでした。バレッタだけでなく港町として有名なマルサシュロック、古都イムディーナなどマルタの文化を感じられるスポットが数えきれないほど存在しているので、暇で困ることは無いかと思います。私が特にお勧めしたいのはゴゾ島にある要塞都市【チタデル】です。だまし絵で有名な教会【ゴゾ大聖堂】はチタデル内にあり、非常に見ごたえのあるものでした。附属の博物館では歴史ある調度品が展示されていてとても勉強になります。ゴゾ島にいくまでのフェリーも景色を楽しめるのでぜひ観光してみてほしいです。
コロナ禍を経て・・・勇気を出して世界へ飛び込んで広がった視野
マルタは私の人生で3度目の留学でした。留学するたびに感じますが、留学中の出来事は何一つとして無駄ではなく、どんな失敗も人生を豊かにする経験だったと思い返すことが出来ます。現地で出会った友人、必死に学んだ時間、楽しかった観光、そのすべてが財産となりました。「4年生だから」、「理系だから」と留学をあきらめず、勇気を出して身を投じて本当に良かったです。コロナ禍で自分を見つめる時間が多かったこの4年間でしたが、留学して改めて外へと目を向けることが出来ました。【井の中の蛙】にならず、学生のうちに視野を広げることが出来たのは良い経験だったと感じています。
英語に自信がないから、時間がないからと理由をつけて留学をあきらめずに、まずは誰かに相談し、自分が本当はどうしたいのか考えてみてほしいと思います。留学して後悔することは絶対にありません!学生の新鮮な目線でぜひ、海外を見てほしいと思います。