かがやく先輩

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現地レポート

PALETTE SCHOOL インターンシップ(フィリピン) / 医学部保健学科 川畑遥さん

〇現地での活動について

 インターンシップではPALETTE SCHOOLの運営に関わる様々な業務サポート、特に、日本人留学生の受け入れ拡大をめざすwebマーケティングが私の主な仕事であった。企画から取材交渉、インタビュー、写真撮影や編集まで、すべて自分で考えて行う方式で、誰かがつきっきりで教えてくれると思っていた私は当初途方に暮れた。先の見えないインターンシップから逃げたくなったが、ここであきらめてはせっかく日本から来た意味がないと思いがんばることにした。
 まずは語学学校周辺の地域調査から始めた。コミュニティへ出向き、地元の人々との交流、スラムからの強制立ち退きを受けた人々が暮らす再定住地区への訪問、貧困地区での食育ボランティアなど事務所の外の世界を積極的に見て回った。調査を進めるうち、フィリピンの文化や社会の魅力、問題点が見えてきて、それらを発信したいと考えるようになった。
実際に情報を発信するにあたり、まずはSNSマーケティングや写真撮影、編集方法について学び、取材した情報をもとに広報活動を展開していった。その結果、SNS、ホームページともにアクセス数が伸びていった。SNSをきっかけとして、語学学校に留学申込があった時にはとても嬉しかった。さらに、自らの活動経験を担当者が変わっても継続して運用できるよう、次のインターン生の参考となるSNS運用マニュアルにまとめて引き継ぐこともできた。

〇本活動での成果

 まず、実際に自分の目で確かめて感じたことに基づき、たとえ完璧でなくても取り組んでみることで、大きな成長が得られることに気づいた。活動を通し、いつも完璧な自分を追い求め、届かない理想を掲げ、失敗を恐れて取り組む前にあきらめてしまう自分を前進させることができた。そして何より、自分の発信によって他者に影響を与えたり、他者を動かしたりするということの難しさや面白さを知ることができたのもこのインターンシップならではの貴重な学びだった。
 また、国際協力の現場はまだまだ多くの課題があり、仕事を一から丁寧に教えてくれるわけでも、設備が十分に整っているわけでもない。こうした現場に協力者として参加する場合、自分自身のこと(自分の弱点や日本の現状など)を省み理解すること、常に知識や情報をアップデートする努力をすること、そしてその土地の人や文化を尊重し、そこにある資源を工夫して活用していくことがとても重要であると知った。そして、自ら行動を起こせば、新しい世界が広がり、さまざまな人と出会い、新たな自分とも出会えることを学んだ。

〇本活動を今後どのように活かしていくか

1.医療や福祉にマーケティングの視点を取り入れる
 医療分野においても、「他者を動かす」ということが求められる。たとえば、生活習慣病予防のための食生活改善、運動の習慣化や禁煙などである。しかし、人は一度染み付いた生活習慣を変えることは容易ではなく、たとえ不健康だと分かっていても、悪い習慣をやめられない。今回のインターンシップでwebマーケティングを行った経験から、人々の行動変容を促すには、理にかなった合理的な説明だけでなく、人々の印象や感情に働きかけることが有効であると学んだ。つまり、身体への悪影響といったマイナス効果や理論を講義やテキストで教育するよりも、人々がその行動を魅力的だと感じるよう宣伝するほうが効果的だということである。また、人の行動は、他人や社会の影響を大きく受けていることもわかった。この学びから、今後医療従事者として、社会全体を俯瞰し、多角的に人々の行動を捉え、健康を支えていきたいと考えている。
2.国際的な視野をもって、人を想う力を育む
 私は将来、国際機関で国際保健の発展に貢献したいと考えている。今回のインターンシップ活動中、フィリピンの死因で最も多い高血圧と生活習慣との関連について調べることができた。現地でのインタビューや生活調査を通じて、高血圧につながる不健康な食習慣の背景には深刻な貧困問題があることがわかり、生活習慣に対する個人の意識変化だけで改善できるような安易なことではないと現実の厳しさを悟った。同じ文化や社会的背景をもつ日本人同士でも、正しい知識や意識の向上や行動変容の促進は容易ではない。ましてや、歴史や風土、教育や思想も異なる他国の人々の生活習慣に介入することなど、到底不可能であるかのように感じられた。そして、「フィリピンで活動して現地を視察すれば、将来どんなふうに国際保健に貢献していけばよいのかがわかるかもしれない」と漠然と考えていた自分がいかに浅はかであったかを自覚した。世界には私の知らない課題がまだまだたくさんあり、今後看護学への学びを深める中で、誰のために、そして何のために看護を提供していくのかを、国際的な視点を持って考えていく必要があると考えている。
今回の経験では「人を想う力」の大切さを強く感じたので、今後もさらにさまざまな学習や体験を積んで、自分自身に潜む「人を想う力」をますます育んでいきたい。